衒学ポップ :\ Notes \ 神経質なジュリエットと狂信的なロミオ/芸術カルトについて




cf.

ロミオとジュリエット効果とは、目的達成において障害となるものが、かえって目的達成の意思を強くする心理的効果のことである。



芸術品には、気軽に気の向くまま楽しむべき芸術品もあれば、しっかり味わい楽しむべき芸術品もある。そして、前者を好む鑑賞者もいれば、後者を好む鑑賞者もいる。

芸術品をしっかり味わい楽しむということは、すなわち、集中して、多くの時間をかけて芸術品を鑑賞するということであるから、そのように鑑賞する者がその芸術品に更に愛着を持つようになっても不思議は無い。

そしてそういった鑑賞者はしばしば集団を形成する。ある芸術品に多くの鑑賞資本を費やす人々。では彼らは一体、どのような性質を持つのか。

彼らは彼らの鑑賞する芸術品を賞賛し、その芸術品に更に愛着を持つようになる。彼らはその芸術品を理解していることを誇りに思うし、集団内で互いに、話のわかる奴として認識し合う。そしてその集団は更に強固なものになる。

彼らは往々にして排他的である。集団外の、彼らの鑑賞する芸術品を理解できない者たちを軽蔑するし、彼らの鑑賞する芸術品に興味を持ち、彼らに近づいてきた者さえ、初心者、新参者、などとして侮蔑する。

彼らの鑑賞する芸術品を理解できない人は、彼らがなぜそんな集団を形成しているのか、することができるのか不思議に思うし、理解できないが故に、不気味に思う。マニアと呼んだり、オタクと呼んだり、或いは「カルト」と呼びさえする。

このタイプの「芸術カルト」において中心にある芸術品は、深い鑑賞が可能な芸術品であり、多くの鑑賞資本を費やす、余地を残している芸術品である。その理解において、多くの時間を必要とする、多くの前提知識を必要とする、多くの資金を必要とする、そういった、普通の鑑賞者たちにとっては障害であることこそが実は、「信者」を集める要因なのであり、逆に言えば「信者」たちは、学術書の長ったらしさ、料理の隠し味、スポーツカーの法外な価格、そういったものに魅力を感じる人々なのである。



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