衒学ポップ :\ MnB \ ある商人の物語 #03




「いたぞ、あそこだ!」
ディリム平原に、荒くれ者の大声が響く。……汚らしい発音だ。





イボンさんが呟いた。
「たった四人か……。奴ら、三十人はいるって話ですぜ。こいつらはただの斥候だ」
「三十人? 山賊にしては大規模ですね……。で、あの者達をどうします?」
「私一人ならなんとかなりますがね、あんたを守りながらだときついでしょうな。よし、私がこいつらを食い止めまさ。馬をとばして、とっとととんずらしてくんな」
「大丈夫ですか? 二人で協力して退治した方がいいのでは?」
するとイボンさんは鬱陶しそうに首を振った。
「あー、いい、いい。シロートがいちゃ困るんですよ。ほら行った行った」
山賊は目の前まで迫っている。馬車にとりつかれては厄介だ。仕方なく、私は鞭を打ち、馬を走らせた。
「かたじけない! 馬車を預け次第、すぐに戻ります!」
急がねばならない。次の村、アジュナへと。








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