衒学ポップ :\ MnB \ ある商人の物語 #04







到着したようだ。谷をまたぐようにして作られた村、アジュナへ。



「旅の方ですかな」
「はい。私は行商人の、アルフォンス・ベネディクトと申します。実は連れの者が山賊に襲われているのです。急いで助けに行かねばなりません。少しの間、この馬車を預かっていただけませんか」
「山賊に? なんてことだ。ふーむ」
アジュナ村の村長は少し考える素振りを見せた。
「わかりました。しばらく馬車をお預かりしましょう。なあに、この村には山賊どもも手が出せんのです。ご覧の通り砦のようになっておりますからな。ご安心ください。あなたの馬車は責任を持ってお守りしますよ。さあ、お連れさんを早く助けに行きなさい」
「ありがとうございます。よろしくお願いします!」
私は馬をもと来た方向に向ける。
「ただ、ひとつだけご注意を。日が暮れるまでに戻りなさい。この辺りの山賊、ジャコブ一味は、夜にうろつくことが多いのです」
「ご忠告ありがとうございます! それでは!」
私は、馬の横腹を蹴った。



私はイボンさんと別れた辺りに戻った。しかし、
イボンさんの姿も山賊の姿もそこには無かった。





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